2社間と3社間、どっちを選ぶ?印刷業界での使い分け方法

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会社の資金繰りのことで、夜も眠れない。
そんな経験、経営者の方なら一度はあるのではないでしょうか。

こんにちは、埼玉県で小さな印刷会社を経営している田中健一と申します。

「2社間ファクタリングと3社間ファクタリング、うちの会社にはどっちが合っているんだろう?」
この問いは、かつて資金繰りに窮した私が、喉から手が出るほど答えを欲していたものでした。

この記事では、私の会社「田中印刷工業」が実際に経験した失敗と成功をもとに、教科書的な解説では分からない、印刷業界の現場で本当に役立つファクタリングの使い分け方を、包み隠さずお話しします。

同じように孤独な戦いを続けている中小企業の経営者仲間へ、少しでも私の経験が役に立てば、これほど嬉しいことはありません。

ファクタリングの基本と印刷業界の現状

ファクタリングとは?2社間と3社間の仕組みを簡潔に解説

まず、基本の「き」からおさらいさせてください。
ファクタリングとは、会社が持っている「売掛金(請求書)」を専門の会社に買い取ってもらうことで、入金日よりも早く現金を手に入れる資金調達の方法です。

その仕組みには、大きく分けて2つの種類があります。

  • 2社間ファクタリング
    • 自社とファクタリング会社の2社だけで契約が完結します。
    • 取引先に知られることなく、スピーディーに資金化できるのが最大の特徴です。
  • 3社間ファクタリング
    • 自社、ファクタリング会社、そして売掛金の支払い元である「取引先」の3社が関わります。
    • 取引先の協力が必要になりますが、その分、手数料が安くなるのが一般的です。

どちらが良い・悪いという話ではなく、会社の状況によって最適な選択が変わってくるのです。

印刷業界特有の資金繰り課題

正直に言うと、私たち印刷業界を取り巻く環境は、年々厳しさを増しています。
ペーパーレス化の波、原材料費の高騰、そして得意先からの値下げ要求…。

売上を確保するだけでも大変なのに、支払いサイトが長い取引も多く、手元の現金が不足しがちです。
「来月の従業員の給料、払えるだろうか…」
私も、そんな不安で何度も眠れない夜を過ごしました。

田中印刷工業が直面した資金難とファクタリングとの出会い

私の会社が本格的に危機に陥ったのは、2019年の秋でした。
大口取引先の支払いサイトが、突然60日から90日に延長されたのです。
たった30日の延長ですが、これが会社のキャッシュフローを直撃しました。

銀行に追加融資を断られた帰り道、車の中で一人、悔し涙を流したことを今でも鮮明に覚えています。
「もうダメかもしれない…」
そんな時、経営コンサルタントから紹介されたのが「ファクタリング」でした。

2社間ファクタリングの特徴と活用シーン

メリット:取引先に知られず資金化できる安心感

2社間ファクタリングの最大のメリットは、何と言っても取引先に知られずに資金調達できることです。
長年付き合いのある取引先に、「あの会社、資金繰りが厳しいのか?」と勘繰られるのは、絶対に避けたかった。

申込みから入金までのスピードも圧倒的で、私の場合は翌日には現金が振り込まれました。
あの時の安堵感は、一生忘れることはないでしょう。

デメリット:手数料の高さと信用リスク

一方で、デメリットは手数料の高さです。
私が初めて利用した時の手数料は、なんと15%。
100万円の売掛金が、85万円になってしまう計算です。

「正直、目ん玉が飛び出るほど高いと思いました。でも、背に腹は代えられなかった。従業員の顔を思い浮かべると、やるしかなかったんです」

この手数料の高さは、ファクタリング会社が「売掛金が本当に回収できるか」というリスクを負うために発生します。
だからこそ、信頼できる業者を選ぶことが何よりも重要になります。

実体験から学んだ「使いどき」と「注意点」

初めて利用した時の心理と失敗談

私の経験から言える、2社間ファクタリングの「使いどき」は、以下の通りです。

  • とにかく急いで現金が必要な時
  • 取引先との関係を絶対に崩したくない時
  • 初めてファクタリングを利用する時

注意点としては、手数料の高さから、常用するのは危険だということです。
あくまで「緊急避難的な措置」と捉え、計画的に利用することが大切です。

3社間ファクタリングの特徴と活用シーン

メリット:手数料が安く、透明性も確保できる

3社間ファクタリングの魅力は、何と言っても手数料の安さです。
取引先がファクタリング会社へ直接支払うため、ファクタリング会社のリスクが低減され、手数料も安くなります。

私の会社では、交渉の末、手数料を10%から最終的には5%程度まで下げることができました。
この差は、経営にとって非常に大きいです。

デメリット:取引先への通知と調整の手間

最大のハードルは、取引先にファクタリングの利用を通知し、承諾を得なければならない点です。
「どう説明すれば、理解してもらえるだろうか…」
この調整には、かなりの神経を使います。

また、契約手続きも2社間に比べて少し時間がかかる傾向があります。

どんな印刷会社に向いている?現場視点のアドバイス

佐藤さんの娘の学費と3社間導入の決断

3社間ファクタリングは、以下のような会社に向いていると感じます。

  • 取引先と強固な信頼関係が築けている会社
  • 資金調達を急いでいない、計画的な利用ができる会社
  • 継続的にファクタリングを利用し、手数料コストを抑えたい会社

私の会社には、勤続25年の佐藤さんというベテランの印刷オペレーターがいます。
彼が「娘の大学の学費で、まとまったお金が必要で…」と相談に来てくれた時、私は決意しました。

「佐藤さんのためにも、会社として安定した資金繰りを実現しなければ。そのためには、手数料の安い3社間を導入する必要がある」

長年の付き合いがある取引先に正直に事情を話し、頭を下げました。
幸いにも理解を得られ、3社間ファクタリングへの切り替えが実現したのです。
この経験は、正直で透明性のある経営の大切さを私に教えてくれました。

2社間と3社間、印刷会社はどう使い分けるべきか?

売上規模・取引先との関係性による選択基準

では、具体的にどう使い分ければ良いのか。
私の考えを、一つの表にまとめてみました。

項目2社間が向いているケース3社間が向いているケース
緊急度高い(明日までに現金が必要)低い(計画的に資金調達)
取引先との関係まだ浅い、知られたくない信頼関係が強固
手数料高くてもスピードを優先とにかくコストを抑えたい
利用頻度スポット(今回限り)継続的・長期的

この表を一つの目安として、自社の状況と照らし合わせてみてください。

「急ぎか」「長期視点か」で変わる判断軸

要するに、判断軸はシンプルです。
「緊急の火消し」が必要なら2社間、「体質改善」を目指すなら3社間、というイメージです。

最初は2社間で急場をしのぎ、経営が少し落ち着いたら、信頼できる取引先に相談して3社間に切り替えていく。
これが、中小企業にとって現実的なステップではないでしょうか。

手数料だけで決めない、田中流・バランスの取り方

現在の使い分けパターン(月1〜2回の運用実例)

現在の私の会社では、基本的に手数料の安い3社間ファクタリングをメインに利用しています。
しかし、急な大口の受注で仕入れ資金が先行する場合など、ごく稀に2社間ファクタリングをスポットで利用することもあります。

このように、両方の特徴を理解し、状況に応じて柔軟に使い分けることが、賢いファクタリング活用術だと考えています。

失敗と成功から得た教訓:経営者としてのリアルな選択

高手数料業者との契約失敗談とその代償

恥ずかしい話ですが、私も失敗を経験しています。
焦りから、手数料20%という悪質な業者と契約してしまったことがあるのです。
300万円の売掛金が、手元に入ったのはたったの240万円。

自分の無知と焦りが招いた結果に、一週間ほど本気で落ち込みました。
この失敗から、業者選びの重要性と、冷静な判断力がいかに大切かを学びました。

妻との対話と「正直な経営」の決意

その時、経理を手伝ってくれている妻に言われた言葉があります。
「高い勉強代だったと思って、次に活かしましょう。私たちはお客さんにも、従業員にも、正直でいましょう」

この一言で、目が覚めました。
経営が苦しいからといって、何かをごまかしたり、隠したりしてはいけない。
この経験が、私の「正直で透明性のある経営」という哲学の原点になっています。

ファクタリングを卒業するために今取り組んでいること

ファクタリングは、間違いなく私の会社を救ってくれた恩人です。
しかし、いつまでも頼り切るわけにはいきません。
最終的な目標は、もちろん「ファクタリングからの卒業」です。

そのために、今、私たちは以下のことに取り組んでいます。

  1. 新規顧客の開拓と利益率の改善
  2. Webデザインなど新規事業への挑戦
  3. 経費の見直しとキャッシュフローの管理徹底

簡単な道のりではありませんが、従業員とその家族の未来のために、一歩ずつ前に進んでいくつもりです。

まとめ

最後に、今日の話をまとめさせてください。

  • 2社間ファクタリングは、「スピード」と「秘匿性」が命。緊急時の切り札です。
  • 3社間ファクタリングは、「低コスト」と「信頼性」が強み。長期的な体質改善に向いています。
  • どちらか一方を選ぶのではなく、自社の状況に合わせて賢く使い分けることが最も重要です。
  • 手数料だけで決めず、信頼できるパートナー(ファクタリング会社)を見つけることが成功の鍵です。

もし今、あなたが資金繰りで悩んでいるのなら、決して一人で抱え込まないでください。
ファクタリングは、あなたの会社を救う有効な選択肢の一つです。

ただし、利用する際は必ず正しい知識を身につけ、信頼できる相手と取引してください。
そして何より、あなたの会社の状況に合った方法を選ぶことが大切です。

経営者は孤独です。
私も、何度もそう感じてきました。

この記事が、同じように奮闘するあなたの心を少しでも軽くし、「うちもやってみよう」と一歩踏み出すきっかけになれたなら、これ以上嬉しいことはありません。

あなたの会社の未来を、心から応援しています。

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