給料日前夜、静まり返った事務所でたった一人、通帳の数字とにらめっこする。
そんな経験はありませんか。
従業員とその家族の生活が、自分の双肩にずっしりとのしかかるあの感覚。
「今月も、無事に給料を払えるだろうか…」
そのプレッシャーは、経験した者にしか分からない、まさに“胃が痛くなる瞬間”です。
はじめまして、埼玉県所沢市で従業員12名の小さな印刷会社を経営している、田中健一と申します。
これは、どこにでもいる中小企業の社長である私が、実際に体験した資金繰りの苦しみと、それをどう乗り越えてきたかの物語です。
この記事では、私の失敗も葛藤も、包み隠さずお話しします。
なぜなら、同じように孤独と不安の中で戦っている経営者の方に、「あなたは一人じゃない」と伝えたいからです。
目次
胃が痛くなる前兆〜給料日前の資金繰り
毎月20日を過ぎたあたりから、私の胃はキリキリと痛み始めます。
給料日は25日。
その日までに、必要な現金を用意しなければならないという、当たり前でありながら、最も重いタスクが迫ってくるからです。
資金繰り表とのにらめっこ
パソコンの画面に映し出された資金繰り表。
入金の予定額と、出ていく支払額。
数字を何度見比べても、月末の残高予測は心もとないままです。
「あと〇〇万円、足りない…」
この現実に、心臓がぎゅっと掴まれるような感覚を覚えます。
頭に浮かぶ「12人の顔」とその家族
そんな時、決まって頭に浮かぶのは、従業員たちの顔です。
- 勤続25年のベテラン、佐藤さん。娘さんの学費は大丈夫だろうか。
- 入社3年目の若手、山田君。最近結婚したばかりだ。
- パートで経理を手伝ってくれる鈴木さん。彼女の頑張りがなければ会社は回らない。
12人の従業員には、それぞれ守るべき家族がいます。
その生活を背負っているという責任の重さに、押しつぶされそうになるのです。
支払いサイトと入金タイミングのズレ
うちのような中小企業にとって、最大の敵は「入金と支払いのタイミングのズレ」です。
ありがたいことに仕事はあっても、大口の取引先からの入金が60日後、時には90日後になることも珍しくありません。
しかし、仕入れ代金や経費、そして従業員の給料は、待ったなしでやってきます。
このズレが、じわじわと会社の現金を奪っていくのです。
「今月も乗り切れるのか…?」という不安との戦い
月末が近づくにつれて、不安はどんどん大きくなります。
夜中に何度も目が覚めては、スマホで銀行の残高を確認してしまう。
妻には「また見てるの?」と心配されますが、この癖だけはどうしてもやめられません。
経営者なら、この気持ちを分かってもらえるのではないでしょうか。
銀行は冷たく、ファクタリングは高い
「あと数日、数週間だけ乗り切れば、大きな入金があるのに…」
そう思って、メインバンクに相談に行った日のことは、今でも忘れられません。
銀行融資の壁と心が折れた日のこと
会社の状況を正直に話し、追加融資をお願いしました。
しかし、返ってきたのは非情な言葉。
「前期の決算が赤字なので、難しいですね」
分かっていたことでした。
しかし、長年付き合ってきた銀行からのその一言は、私の心を折るには十分すぎる威力がありました。
帰り道、車の中で一人、涙がこぼれたのを覚えています。
「従業員の給料が払えないかもしれない」
その恐怖で、ハンドルを握る手が震えました。
初めてのファクタリング体験とその葛藤
その夜、藁にもすがる思いで経営コンサルタントに相談し、初めて「ファクタリング」という言葉を聞きました。
売掛金を買い取ってもらい、早期に現金化できるサービスだというのです。
正直に言うと、最初は「そんなうまい話があるか」と半信半疑でした。
しかし、提示された見積もりを見て、今度は別の意味で愕然とします。
「手数料15%」を飲み込んだ理由
そこに書かれていた手数料は「15%」。
300万円の売掛金を現金化するのに、45万円も取られる計算です。
「高すぎる…!こんなの手を出したら、利益が全部吹き飛んでしまうじゃないか!」
妻にも猛反対されました。
元銀行員の彼女からすれば、信じられない利率だったのでしょう。
しかし、私にはもう選択肢がありませんでした。
目の前には、支払いを待つ従業員の給料日という現実が迫っていたのです。
私は、従業員の生活を守るために、この手数料を飲み込む決断をしました。
翌日の入金に感じた“命拾い”のような安堵感
申込書を震える手で書き、必要書類を送った翌日。
信じられないことに、本当に会社の口座にお金が振り込まれていました。
その金額を見た瞬間、全身の力が抜け、椅子に崩れ落ちそうになったのを覚えています。
それはまさに、“命拾いした”という感覚でした。
手数料は確かに痛かったですが、あの時の安堵感は、何物にも代えがたいものだったのです。
経営者の孤独と責任感
この一連の出来事を通じて、私は経営者という立場の孤独と責任の重さを、改めて痛感させられました。
従業員を「家族」として見ることの重さ
私は、従業員を単なる労働力だと思ったことは一度もありません。
共に会社を支える「家族」だと思っています。
だからこそ、彼らの生活を守る責任は、何よりも重い。
- 社員の子どもの進学
- 家族の病気
- 家のローン
彼らの人生の一部を、私も一緒に背負っている。
その実感が、プレッシャーとしてのしかかってきます。
妻にだけ見せる弱音、夫婦の夜通しの会話
こんな弱音は、従業員には絶対に見せられません。
私が唯一、本音を打ち明けられるのは妻だけです。
資金繰りに窮して銀行に断られた夜、初めて妻に会社の厳しい状況を全て話しました。
「ごめん…」としか言えない私に、彼女は「大丈夫。二人で乗り越えよう」と言ってくれました。
二人で朝まで話し合ったあの夜がなければ、今の私はなかったかもしれません。
息子の反抗期に感じる時代とのギャップと孤独
最近、中学2年生の息子にこう言われました。
「なんで印刷会社なんてやってるの?時代遅れじゃん」
カチンときましたが、何も言い返せませんでした。
デジタル化の波に必死で対応しようとしている自分の努力を、一番身近な家族に理解してもらえない。
そんな時、ふと孤独を感じてしまいます。
少しずつ進む「打開策」
最初のファクタリング利用は、まさに“劇薬”でした。
しかし、そのおかげで会社は倒産の危機を免れ、私は少しずつ冷静に次の手を考える時間を得ることができました。
ファクタリングとの正しい付き合い方
一度利用したことで、ファクタリングは決して魔法の杖ではないことが分かりました。
依存すれば、高い手数料が経営を圧迫するだけです。
これはあくまで「緊急避難的な選択肢」であり、「計画的な利用」が何よりも重要だと学びました。
手数料交渉と業者選びのコツ
その後、私はファクタリングについて猛勉強しました。
そして、複数の会社から相見積もりを取ることの重要性を知ります。
今では、いくつかの優良な会社と付き合いがあり、手数料も交渉の末、当初よりずっと低い条件で利用できるようになりました。
1. 複数の会社から相見積もりを取る
2. 契約内容(特にノンリコースか)を徹底的に確認する
3. 会社の状況を正直に話し、信頼関係を築く
この3つを徹底するだけで、状況は大きく変わります。
売上回復と「ファクタリング卒業」への道筋
ファクタリングで得た時間を使って、経営の立て直しにも奔走しました。
新しい営業先を開拓し、Webデザインのような新規事業にも挑戦しました。
その結果、少しずつ売上は回復。
今ではファクタリングの利用回数も減り、「ファクタリングからの卒業」という目標が、現実的なものとして見えてきています。
小さな成功体験が自信と希望に変わる瞬間
新しい印刷機を導入できた時、従業員全員が本当に喜んでくれました。
ベテランの佐藤さんが「社長、ありがとうございます」と涙ぐんでくれた時は、私も胸が熱くなりました。
こうした小さな成功体験の積み重ねが、失いかけていた自信と、未来への希望を取り戻させてくれたのです。
給料日前夜のルーティンとリアルな心情
今でも、給料日前夜の緊張感が完全になくなったわけではありません。
長年の癖は、そう簡単には抜けないものです。
スマホで残高をチェックする夜中の習慣
やはり、夜中にふと目が覚めて、スマホで銀行の残高を確認してしまいます。
ただ、以前と違うのは、そこに絶望ではなく「よし、大丈夫だ」という確認作業の意味合いが強くなったことです。
「あと〇万円足りない」現実に震える
もちろん、今でもヒヤリとすることはあります。
急な出費が重なり、「あれ、思ったより残高が少ない…」と焦ることも。
あの、血の気が引くような感覚は、何度味わっても慣れるものではありません。
朝、従業員に笑顔を見せるための“演技”
どんなに夜中に悩んでいても、翌朝は「おはよう!」と笑顔で従業員を迎えます。
経営者の不安は、会社全体の空気を悪くしてしまうからです。
これは“演技”かもしれませんが、従業員に安心して働いてもらうための、社長としての大切な務めだと思っています。
胃薬とともに眠る前夜のリアル
正直に言うと、今でもデスクの引き出しには胃薬が常備してあります。
給料日前夜は、お守りのようにそれを飲んでから眠ることも。
これが、中小企業経営者のリアルな姿なのかもしれません。
同じ境遇の経営者へ伝えたいこと
もし、あなたが今、私と同じような悩みや苦しみを抱えているなら。
これだけは伝えたいです。
正直に言うと、失敗もたくさんしてきた
私は、決して優秀な経営者ではありません。
手数料20%の悪質な業者に引っかかってしまったこともあります。
判断を誤り、遠回りしたことも数え切れないほどあります。
でも、その失敗の一つひとつが、今の私を作っています。
「一人じゃない」と思えるだけで救われる
経営者は孤独です。
しかし、日本中には、あなたと同じように資金繰りに悩み、従業員の生活を背負い、孤独に戦っている仲間がたくさんいます。
そう思えるだけで、少しだけ心が軽くなりませんか。
この記事が、その一助になればと心から願っています。
ファクタリングは“逃げ”ではなく“選択肢”
ファクタリングに対して、ネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、私は断言します。
計画的に正しく使えば、これは会社を救うための有効な“選択肢”です。
“逃げ”でも“最終手段”でもなく、未来へ進むための一つの戦略なのです。
経営に悩む人へのささやかなエール
どうか、一人ですべてを抱え込まないでください。
信頼できる人に相談してください。
そして、自分自身を責めないでください。
あなたが従業員を思い、必死で会社を守ろうとしている。
そのこと自体が、何よりも尊いのです。
まとめ
給料日前夜の、あの胃が痛くなるような不安。
それは、従業員とその家族の生活を守ろうとする、経営者の責任感の証なのかもしれません。
- 給料日前の資金繰りのプレッシャーは、経営者にとって宿命とも言える悩みです。
- 銀行に断られても、ファクタリングのような他の選択肢を知ることで道は開けます。
- ファクタリングは手数料が高いですが、計画的に利用すれば強力な武器になります。
- 経営者の孤独は、同じ境遇の仲間がいると知るだけで和らぎます。
- 失敗を恐れず、従業員を守るための決断を下すことが何より大切です。
私の正直な体験談が、今まさに戦っているあなたの心に少しでも届けば、そして、ほんの少しでも助けになることができれば、これほど嬉しいことはありません。